泣けるほど使える!  相場に現れるフラクタルとは?

皆さんは、相場に現れるラクタル(英ではFractal、仏ではFractale)をご存じでしょうか。「聞いたことはあるけど詳しくは知らない」という人が多いのではないでしょうか。



それもそのはずで、相場に現れるフラクタルを取り上げた専門書やネット上の記事はあまりありません。

フラクタルとは、どんな小さな部分をとっても全体に相似しているものをいい(自己相似)、自然界の様々な所に現れてきます。

相場の変動(チャート)にもフラクタルな構造が現れてきます(投資家の群集心理もある意味で自然なもの)。

実は、相場のフラクタルはエリオット波動と深い関係にあり、このポイントを理解すると、より一層エリオット波動が使いこなせるようになってきます。

そこで今回は、相場におけるエリオット波動とフラクタルの関係について掘り下げてみたいと思います。

こちらをご覧になる前に「エリオット波動理論を使いこなす為の基礎知識」を読んで頂くと分かり易いと思います。

アイキャッチ画像

フラクタルとは?


自己相似な構造



フラクタル図形



フラクタルは、イギリスの気象学者ルイス・フライ・リチャードソン(1881~1953)により発見され、フランスの数学者ブノワ・マンデルブロ(1924~2010)により一般化された概念です。

フラクタルは「どんなに小さな部分をとっても、全体に相似している図形(構造)」のことをいいます。

少し分かりにくいので、上の「シェルピンスキーのギャスケット」と呼ばれる図形を使って説明します。

この図形は、全体的に見るとひとつの三角形ですが、注視すると4つの相似の三角形が集まってできあがっていることが分かります。

さらに、そのうちのひとつの三角形をよく見ると、その三角形も4つの相似の三角形が集まってできあがっていることに気付きます。

この流れが無限に続いてできあがっているのが、フラクタルで代表的な図形と言われる「シェルピンスキーのギャスケット」で、どんなに小さな部分を切り取って見ても相似の三角形が現れます。

このような構造がフラクタルです。

このフラクタルは、自然界の様々な所に存在します。




自然界のフラクタル

シダの画像


地形や川(地学)、植物の構造や血管の構造(生物)、星の分布や土星の輪(宇宙)、固体の表面や放電パターン(物理化学)など、自然界にはたくさんのフラクタルが存在します。

シダもそのひとつです。シダは小さな葉が結びついてひと回り大きな葉を作り出していますが、その小さな葉は、ひと回り大きな葉の相似形となっています。

この他にも、海岸線、山の形、雲など、一見すると不規則に見えるようなものでも、細部まで見るとフラクタル構造になっているものが自然界にはよくあります。

ある意味では、フラクタルは自然の法則であると言えるかもしれません。

実は、このフラクタルは相場の変動(チャート)にも現れます。

相場の値動きには群集心理が反映されるので、幾つかの自然の法則が普遍的に存在します。エリオット波動やフィボナッチはその典型的なものですが、このフラクタルもそのひとつです。

何を隠そう、フランスの数学者ブノワ・マンデルブロがフラクタルの着想を得たのは、株価のチャートからであると言われています。

そして、エリオット波動理論の生みの親であるR.N.エリオット(1871~1948)は、早くからこの自然の法則を株価チャートの中に見つけ出していました。





相場のフラクタル構造



相場のチャートは、時間軸の違いによって見え方が変わってきます。

たとえば、週足チャートでは上昇トレンドに見えるような相場の変動も、日足チャートでは下降トレンドのように見え、また、さらに時間軸を落とした時間足チャートでは上昇トレンドに見えるような場合もあります。

このように、相場の変動は時間軸によってバラバラで、一見するとそこには何の関係性もないように思えてしまいます。

しかし、実は相場には段階があり(フラクタルの次元)、このような各時間足の動きは密接に連動しています。

そしてさらに言うと、エリオット波動のサイクルととても深い関係にあります。




エリオット波動の8波1サイクル


8波1サイクルイメージ
相場は、波のように寄せては返すをくり返しながらトレンド方向に進んでいきます。

エリオット波動理論で具体的に言うと、5つの波の推進波(Motive Waves)でトレンド方向に進み、3つの波またはその変形の修正波(Corrective Waves)でその動きを調整するという動きです。

この5波+3波の合計8波がエリオット波動の1サイクルです。

冒頭の「シェルピンスキーのギャスケット」は、三角形がラクタルの基本形となっていましたが、相場ではエリオット波動の8波1サイクルがその役割を果たします。




相場の段階とフラクタル構造

エリオット波動のフラクタルイメージ



エリオット波動の8波1サイクルは、そのサイクルが終わると自己相似のサイクルが再び現れます。

こうして相場が進んでいくと、ひと回り大きなもうひとつのサイクルが作り出されます。

こうして出来上がるのがフラクタルの次元である相場の段階(Degree)です。

※R.N.エリオットは、その段階の9つに分けて名称をつけています(グランドスーパーサイクル~サブミニュエット)。しかし、これらの名称はそれほど重要ではありません。相場には段階があるということを理解しておけば大丈夫です。

上の図は、エリオット波動サイクルをイメージしたものですが、この中には3つの段階を確認できます。

まず、黒点線丸の1~5(5波)+a~c(3波)でひとつの8波1サイクルを構成していますが、これが1つ目の段階です。

次に、1つ目の8波1サイクルが繰り返し現れることにより、ひと回り大きな1波5波(5波)+a波b波(3波)の8波1サイクルを作り出しています。これが2つ目の段階です。

そして、2つ目の8波1サイクルで、さらにひと回り大きな1波2波を作り出しています。これが3つ目の段階です。

上の図では3つの段階しか確認できませんが、このサイクルの流れはここで終わることはなく無限に続いていきます。

つまり、相場にはいくつもの段階があり、どれだけ上の段階を見ても、逆にどれだけ下の段階を見てもエリオット波動サイクルの8波1サイクルが現れてくるというわけです。

これが相場におけるフラクタル構造です。

相場のチャート(変動)は時間軸によってバラバラで、一見するとそこには何の関係性もないように思えてしまいますが、それは段階の違うエリオット波動サイクルを見ているためです。

実は、週足チャート、日足チャート、時間足チャートなどに現れる各段階は、それぞれ密接に連動しながら同時並行で進んでいるのです。

次に、実際のチャートでエリオット波動サイクルのフラクタル構造を確認してみます。





実際のチャートで見るフラクタル構造



実際のチャートでエリオット波動サイクルのフラクタル構造を確認する前に、推進波と修正波の種類と特徴は習得しておくことをお勧めします。

相場を力強く押し進める5つの波の推進波には、衝撃波(3つの種類がある)とダイアゴナルトライアングル(2つの種類がある)があり、この辺りが理解できていなと実際の相場に現れるエリオット波動サイクルは見え難くなってしまいます。

また、実際の相場に現れる推進波は、理想的な形のものばかり現れてくるわけではありません。なので、衝撃波の3つのルールも習得しておくこともお勧めします。


※推進波の種類についてはエリオット波動の推進波 その種類と特徴のまとめをご覧ください

また、衝撃波の3つのルールについては「エリオット波動におけるサイクルと必然的なルールとは?」をご覧ください




3波延長型衝撃波(推進波)のサイクルイメージ


推進波(3波延長型衝撃波)サイクルイメージ



ほとんどの衝撃波には延長波が含まれます(エクステンションと言います)。

延長波とは、さらに小さく細分化される波を持つ延長した衝撃波で、トレンド方向に進む1波動目、3波動目、そして5波動目の内のいずれかひとつに内包され、チャートにはっきりと浮き出てくる形で現れてきます

当然、延長波を内包する波動はトレンド方向に進む3つの波のうち最も大きな波動となります。

※延長波は衝撃波の形を取るため、それ自体延長波を内包する

上の図は、推進波の中で最もよく現れてくる3波延長型衝撃波のサイクルイメージです(副次波は全て3波延長型衝撃波)。

3波動目に延長波を内包(エクステンション)する衝撃波で、波の大きさは3波動目>5波動目>1波動目です(稀に3波動目>1波動目>5波動目)。

この3波延長型衝撃波は、5波+3波のエリオット波動サイクルの繰り返しにより完成されていて、下の段階のどの部分を切り取って見てもエリオット波動サイクルが現れてくるフラクタル構造になっています。

この3波延長型衝撃波のサイクルは、実際のチャートでどのように見えるのでしょうか。


※衝撃波のエクステンションについては、エリオット波動「衝撃波のエクステンション」を徹底解剖!をご覧ください




実際の米ドルラインチャート

米ドル(ドルインデクス)Dailyラインチャート
上は米ドル(ドルインデクス)Dailyラインチャートに現れた3波延長型衝撃波です(但し、5波延長型衝撃波に発展する可能性あり)。

エリオット波動サイクルを繰り返しながら上昇しており、実際の相場のチャートもフラクタル構造になっていることがよく分かります。

1波動目の推進波は、この時間軸ではハッキリと確認できませんが、延長波3波動目が3波延長型衝撃波→5波動目が1波延長型衝撃波という展開であることが確認できます。

また、浮き出ている延長波3波動目をよく見ると、その内部波動3波動目は1波延長型衝撃波→5波動目は5波延長型衝撃波であることもあわせて確認できます。

さらに時間時を落として下の段階を見ても、きっと同じようなエリオット波動サイクルが現れてくるはずです。

為替相場などは、市場をリードしている通貨の影響を受けるため、ときに分かり難くなることもありますが、やはり実際の相場もエリオット波動サイクルのフラクタル構造になっていると言えるのではないでしょうか。





フラクタルの縦軸で現在地を捉える



エリオット波動サイクルの横の流れ(横軸)において、新たなトレンドがスタートして5波動構成の推進波が現れたのであれば、その次には3波動(又はその変形)構成の修正波が続くことが予想されます。

このように、エリオット波動のサイクルを理解していると相場の大まかな現在地を推定できるようになるため、海外では「エリオット波動は相場の未来予想図である」と言われています。

ただ、横軸だけではエリオット波動を使いこなせているとは言えないようです。

ここからは、フラクタルの縦軸を利用して相場の現在地をより深く捉える手法をご紹介します。




横軸だけでは次の展開は読めない?

ユーロドル為替相場4時間足チャート
上は、ユーロドル為替相場4時間足チャートです。

横軸を確認すると、まず黒丸のポイントでトレンドが変わり、そこから5波動構成の推進波が現れていることが分かります。

その推進波は、4波動目最安値で0.618と0.382に区分され、また2-4チャネル3波ラインタッチで終点を迎えた5波延長型衝撃波(4波動目のリトレイスが深くなると5波動目の多くはエクステンションしてくる)。

この推進波の後には3波構成の修正波が続くことが予想されますが、やはり現れたのはジグザグ修正波(C波はエンディング・ダイアゴナルトライアングル)。

そして、前の5波延長型衝撃波の5-2の安値付近までプルバックして、そろそろ反転してきそうな局面です。

エリオット波動サイクルで考えれば、この次には5波動構成の推進波が続き、トレードチャンスであることは分かります。

しかし、この横軸だけでは、次の推進波がひと回り上の段階の(3波動目)であるのか、それとも(C波)の展開になるのかまでは正確に読めません。

せっかくタイミングよくエントリーできたとしても、正確な現在地が分からなければ「3波動目の展開だった! 利益確定が早すぎた」ということにもなりかねません。

このような場合に、フラクタルの縦軸を利用すると、相場の現在地をより深く捉えることができます。




時間軸を上げて上位のサイクルを確認する

ユーロドル為替相は日足チャート
時間軸を上げて、上位の段階のエリオット波動サイクルを確認してみます。上はユーロドル為替相は日足チャートです(先程の4時間足チャートは、青色点線枠の部分)。

この日足チャートの段階の横軸を確認すると、トレンド転換ポイントからの1波動目はリーディング・ダイアゴナルトライアングル(推進波)。

3波動目が副次波4波動目安値で0.618と0.382で区分され、2-4チャネル3波ラインタッチで終点を迎えた5波延長型衝撃波。

そして、3波動目の展開が、

  • 1波動目×1.618を越えて×3.00の大きさとなっている
  • 0-2チャネルを越えてきている

ことから、この日足チャートの段階におけるフォーメーションは衝撃波である可能性が高いと予想できます。

つまり、先程の4時間足チャート(青色点線枠)において次に展開される推進波はC波ではなく、5波動目の内部波動の3波動目のそれであるということがイメージできるようになるわけです。

※フィボナッチを使った衝撃波の見極めについては「フィボナッチの基礎知識とその手法」をご覧ください




その後の展開を確認してみると・・・

ユーロドル為替相は日足チャート
その後の展開を確認してみると、やはり5波動目の内部波動3波動目の推進波が現れています。

その後、内部波動4波動目→内部波動5波動目と続き、最後はこの日足段階の2-4チャネル1波ラインタッチで衝撃波全体が完成という流れでした。

もし、先程の4時間足チャート(青色点線枠)の段階で、次が5波動目の内部波動3波動目の推進波であることが推定できていたならば、適切なポイントで利益確定できていたはずです。

この一例のように、その段階(横軸)だけでは次の展開が判断できないような局面では、フラクタルの縦軸を使うことにより相場の現在地をより正確に捉えることができるようになってきます。

また、今回は上位の段階のエリオット波動サイクルを確認する例を挙げていますが、逆に下位の段階のエリオット波動サイクルを確認することにより、その段階のフォーメーションを見極めるといった使い方もあります。


このようにフラクタルの縦軸を使うことができるようなれば、かなりエリオット波動を使いこなせていると言えそうです。




フラクタルのまとめ


  • フラクタル構造では、その形の一部が全体の形と自己相似な構造になっている
  • 自然界には地形や植物の構造などたくさんのフラクタル存在する
  • 相場の変動にもフラクタルは現れる
  • 相場のフラクタルは8波1サイクルが基本形となる
  • 8波1サイクルの繰り返しで、ひと回り大きな段階の相似のサイクルが作られる
  • つまり、相場にはフラクタル次元の段階があり、各段階は密接に連動している
  • フラクタルの縦軸を利用すると、相場の現在地がより深く捉えられるようになる

エリオット波動は、横軸だけでも相場のおおよその現在地を捉えることができますが、フラクタルの縦軸を使うと、さらに深く現在地を捉えることができるようになってきます。

ぜひ皆さんも試してみてください。

以上、今回は相場におけるエリオット波動とフラクタルの関係について掘り下げてみました。

※エリオット波動のカウントについては「エリオット波動 波の数え方! 精度を上げるカウント手法」をご覧ください