エリオット波動をマスターしようとしている方は、まずエリオット波動サイクルを理解することから始めてみてはいかがでしょうか。
皆さんは「トレンドがどちらの方向にあるのか?」をどのように判断されていますか。
移動平均線や一目均衡表などのテクニカル指標を使っている方も多いかと思いますが、実はエリオット波動もトレンド系のテクニカル指標として強力な性能を備えています。
修正波のフォーメーションなどについつい目が行きがちになりますが、エリオット波動の真骨頂はサイクルにあり、ここを理解すると相場のおおよその現在地やトレンドの方向が解るようになってきます。
そこで今回は、簡単なのに意外と奥深い「エリオット波動サイクル」を掘り下げてみたいと思います。
サイクルと相場の現在地
根拠とシナリオのないエントリーはリスクが高い
「勢いよく上がってきたので何となく買ってみた」と、ついついポジションをとってしまうことはないでしょうか?
いわゆる「ポジポジ病」というやつです。
凄腕トレーダーと言われている人は、「勢いよく上がっているのでなんとなく買ってみた」「勢いよく下がっているのでなんとなく売ってみた」というようなトレードはまずしません。
凄腕トレーダーの多くは、得意にしている分析手法を駆使して、エントリーするだけの充分な根拠を持ち、そしてエグジットまでのシナリオを描いているようです(損切りのポイントも適切に設定している)。
FX初心者の方は、勢いだけを見てエントリーしてしまいがちになります。
たしかに、相場の勢いはとても大事なのですが、ただそれだけではリスクの高いトレードになってしまいます。
なぜなら、相場の波が反転する直前は往々にしてとても勢いがあるからです(段階の違いこそあれトレンドの最後は推進波)。
「勢いよく上がってきた(下がってきた)のでなんとなくエントリーしてみた」、実はこのようなパターンが一番危険であったりするものです。
「相場を冷静に分析し、ポジションを建てる充分な根拠を持って、シナリオを描いてからエントリーする」
トレードの勝率を高めるポイントはこの辺りにあるのかもしれません。
では、どうやって根拠を持ち、またシナリオを描くか?
そこでお勧めなのが、海外では「相場の未来予想図である」といわれるエリオット波動です。
エリオット波動サイクルとは?
相場はトレンド方向に一直線で進んでいくことはありません。押しや戻りを付けながら波のように進んでいきます。
ラルフ.ネルソン.エリオット(1871~1948)は、過去の米国株式市場のチャートを調べ上げ、この相場の波が、ある一定のサイクルで寄せて返していることを見つけ出しました。
その法則をまとめたものがエリオット波動理論で、その根幹はエリオット波動サイクルにあります。
エリオット波動サイクルは8波で構成される
上は、エリオット波動サイクルのイメージ図です(上昇トレンドのイメージ 下降トレンドの場合は逆になります)。
エリオット波動サイクルはとても簡単な法則です。
「5波(推進波)で進み、3波又はその変形(修正波)でその動きを調整する」
つまり、ひとつのサイクルは5波+3波の合計8波で構成されるというものです。
そして、このサイクルが完成すると、相似の8波1サイクルが再び現れ、この繰り返しにより、ひと回り上の段階のトレンド方向に波のように進んでいくのがエリオット波動サイクルです。
サイクルを通すと見えてくる相場の現在地
相場は一見ランダムに動いているように思えます。
しかし、このエリオット波動サイクルを通してチャートを見るようにしてみてください。
きっと、相場のおおよその現在地が解るようになってくるはずです。
たとえば「推進波の3波動目が終わったようだ! 次は4波動目の押しを待ってエントリーして、5波動目で利益確定だ!」、「推進波の5波動目が終わったようだ。当分トレードはお休みだ。ただ、次の修正波終点は絶好のエントリーポイントになるぞ!」などと、根拠のあるエントリーができるようになり、またトレードのシナリオが描けるようになります。
サイクルを構成するフォーメーション
ただ、5つの波の推進波と3つの波(又はその変形)の修正波には幾つかの種類があるため、そのフォーメーションを知らないと「エリオット波動サイクルの理屈は分かったけど、チャートを見てもそのように動いているように見えないよ・・・」と現在地を推定できなくなってしまいます。
2つの推進波フォーメーション
ひと回り上の段階のトレンド方向に勢いよく進んでいく、5つの波の推進波(Motive Waves)には2つの種類があります。※推進波は1~5の数字で表記します- 衝撃波(3つの種類がある)
- ダイアゴナルトライアングル(リーディングとエンディングの2種類がある)
5つの波の推進波は、そのほとんどが衝撃波(Impulse Waves)5-3-5-3-5の形で現れてきます。
衝撃波は、1波延長型衝撃波、3波延長型衝撃波、そして5波延長型衝撃波の3つの種類があります(共通した3つのルールあり)。
もうひとつのダイアゴナルトライアングル(Diagonal Triangle)にはリーディング5-3-5-3-5とエンディング3-3-3-3-3の2種類があり、リーディングは衝撃波副次波1波動目やabc修正のa波に現れ、エンディングは衝撃波副次波5波動目やabc修正のc波に現れてきます。
ここではあまり深く触れませんが、エリオット波動サイクルで相場の現在地を推定する場合には、これらのフォーメーションやその特徴を知っておく必要があります。
※推進波の種類や特徴は「エリオット波動の推進波 その種類と特徴のまとめ」をご覧ください
4つの修正波パターン
推進波の動きを調整する修正波(Corrective Waves)には、4つの修正波パターンがあり、単純な3つの波で展開されるものと、その変形で展開されるものがあります。※修正波は、推進波と区別するためにabc、ABCDE、WXYZなどのアルファベットで表記されます- ジグザグ修正波(単純な3つの波で展開 5-3-5)
- フラット系修正波(単純な3つの波で展開 3-3-5)
- トライアングル系修正波(基本5つの波で展開 3-3-3-3-3)
- 複合型修正波(上記の修正波が複合の形で展開)
単純な3つの波で展開されるものは、ジグザグ修正波とフラット系修正波で、基本5つの波で展開されるのがトライアングル系修正波です。複合型修正波は、上記の3つが複合して現れてくる修正波です。
エリオット波動サイクルで相場の現在地を推定する場合、一番難しいのがこの修正パターンの見極めです。
修正波は、ひと回り下の段階のフォーメーションが、その段階のように見えてしまうことがあるため、段階の判断が必要となります。
「フラットではなく、複合型だった!」というように、その後半でフォーメーションが解ることがあるのはこのためです。
修正波は、ひと回り下の段階のフォーメーションが、その段階のように見えてしまうことがあるため、段階の判断が必要となります。
「フラットではなく、複合型だった!」というように、その後半でフォーメーションが解ることがあるのはこのためです。
修正波は焦ることなく、1波進むごとにカウント修正しながら、そのフォーメーションを絞り込んでいくようにしてみてください。
慣れてくると、少しずつ早く判断できるようになってくると思いますよ。
慣れてくると、少しずつ早く判断できるようになってくると思いますよ。
この2つの推進波フォーメーションと4つの修正波パターンを知っておくと、相場がエリオット波動サイクルで動いていることが見え、より正確な現在地が推定できるようになります。
以上、ここまでエリオット波動サイクルと相場の現在地についてでした。次は、フラクタルを使ってさらに深く相場の現在地を捉える手法を紹介します。
エリオット波動サイクを説明するときに「ひと回り上の段階」という言い回しを何回か使いました。
「ひと回り上の段階って?」と思われなかったでしょうか。
実は、相場には段階があります。
各段階の動きは、月足チャート、週足チャート、日足チャート、時間足チャート、そして分足チャートなどでそれぞれ確認することができます。
ただ、その動きは時間軸によってバラバラで、一見するとそこには何の連動性もないように思えてしまいます。
しかし、この各段階の動きは密接に連動していて、しかもエリオット波動サイクルととても深い関係にあります。
このポイントを理解できると、さらに深く相場の現在地を推定できるようになり、またその精度も格段に高くなってきます。
「ひとつの8波1サイクルが終わると、相似のサイクルが再び現れ、この繰り返しにより相場は波のように進んでいく」と冒頭に書きましたが、実はこの繰り返しにより、ひと回り上の段階のエリオット波動サイクルが作り出されます。
上の図はエリオット波動サイクルの展開イメージです。
黒点線丸の中で、5波+3波のひとつのエリオット波動サイクルが完成しています。
このサイクルの繰り返しで、ひと回り上の段階の1波~5波(5-3-5-3-5)、続ぎのa波~c波(5-3-5)の8波1サイクルを作り出しているのが確認できると思います。
このように相場が進んでいくと上の図よりもさらにひと回り大きなエリオット波動サイクルができ上ります(上図では1波→2波まで)。
そして、相場が進行し続ける限りこのプロセスは繰り返され、さらに上の段階、逆にさらに下の段階でもこの構造は無限に続いていきます。
結果、相場はどの段階のどの部分を切り取っても、このような8波1サイクルの構造が現れてくることになります(これをフラクタル構造といいます)。
ちなみに、上図の赤枠の5波推進波を切り取って確認すると・・・。
フラクタルで深く相場の現在地を捉える
相場の段階
エリオット波動サイクを説明するときに「ひと回り上の段階」という言い回しを何回か使いました。
「ひと回り上の段階って?」と思われなかったでしょうか。
実は、相場には段階があります。
各段階の動きは、月足チャート、週足チャート、日足チャート、時間足チャート、そして分足チャートなどでそれぞれ確認することができます。
ただ、その動きは時間軸によってバラバラで、一見するとそこには何の連動性もないように思えてしまいます。
しかし、この各段階の動きは密接に連動していて、しかもエリオット波動サイクルととても深い関係にあります。
このポイントを理解できると、さらに深く相場の現在地を推定できるようになり、またその精度も格段に高くなってきます。
エリオット波動サイクルのフラクタル
「ひとつの8波1サイクルが終わると、相似のサイクルが再び現れ、この繰り返しにより相場は波のように進んでいく」と冒頭に書きましたが、実はこの繰り返しにより、ひと回り上の段階のエリオット波動サイクルが作り出されます。
上の図はエリオット波動サイクルの展開イメージです。
黒点線丸の中で、5波+3波のひとつのエリオット波動サイクルが完成しています。
このサイクルの繰り返しで、ひと回り上の段階の1波~5波(5-3-5-3-5)、続ぎのa波~c波(5-3-5)の8波1サイクルを作り出しているのが確認できると思います。
このように相場が進んでいくと上の図よりもさらにひと回り大きなエリオット波動サイクルができ上ります(上図では1波→2波まで)。
そして、相場が進行し続ける限りこのプロセスは繰り返され、さらに上の段階、逆にさらに下の段階でもこの構造は無限に続いていきます。
結果、相場はどの段階のどの部分を切り取っても、このような8波1サイクルの構造が現れてくることになります(これをフラクタル構造といいます)。
ちなみに、上図の赤枠の5波推進波を切り取って確認すると・・・。
上図のような推進波チャートが現れてきます(一例ですが、上図は3波動目がエクステンションした3波延長型衝撃波)。
この段階の波動もエリオット波動サイクルの繰り返しによってでき上がっています。
言うまでもありませんが、この1波動目を切り取って下の段階を確認しても同じような構造が現れてきます。
※フラクタルの詳細は「泣けるほど使える! 相場に現れるフラクタルとは?」をご覧ください
上位の段階を意識して現在地推定精度を高める
各段階の波動は、バラバラではなく連動して動いており、エリオット波動サイクルと深い関係にあることがお分かりいただけたと思います。
この構造を利用して、常に「上位の段階のどの部分を展開しているのか」ということを意識してチャートが見れるようになると、現在地推定の精度さらに上がり、トレードのシナリオも描き易くなります。
たとえば、時間足のチャートで5つの波の推進波が現れた場合、その時間足チャートだけを見ていては次の展開を正確に予想することはできません。
日足チャートや週足チャートで、上位の段階のエリオット波動サイクルを確認して、この推進波が上位の段階の1波、3波、5波、a波、c波のいずれの推進波なのかを理解してはじめて次の展開が読めるようになってきます。
「時間足で推進波を展開しているぞ! おそらく日足段階の修正2波動目c波の推進波だ! そうすると次は3波動目の推進波で大きなトレードチャンスになるぞ!」と、このような目線でチャートが見れるようになれば、かなりエリオット波動を使いこなせていると言えそうです。
以上、ここまでサイクルとフラクタルでさらに深く相場の現在地を捉える手法でした。
次はエリオット波動サイクルを使ってトレンド方向を推定する方法です。
サイクルで読み解くトレンド
エリオット波動サイクルで相場のおおよその現在地が解ったとしても「展開しているフォーメーションは完成したか(トレンド転換したか)? それともまだ継続中か?」といったところまで正確に推定することのはとても難しいものです。
たとえば、推進波が「3波延長型衝撃波で完成したか? それとも5波延長型衝撃波に発展してくるか?」、また修正波が「ジグザグで終わったか? それとも複合型やその他の修正パターンで継続しているか?」という判断などはその一例です。
しかし、エリオット波動サイクルの特徴を使うと、相場のトレンドがどちらの方向にあるのか意外と簡単に推定できるようになります。
エリオット波動サイクルにおける2つのトレンド
まず、エリオット波動サイクルにおけるトレンドについて考えてみます。
トレンドを「相場が進もうとしている方向」という定義で捉えた場合、エリオット波動サイクルには、
- 5つの波の推進波トレンド
- 3つの波(又はその変形)の修正波トレンド
以上の2つのトレンドがあることになります。
そして、さらに付け加えると、この2つのトレンドの上には、ひと回り大きな段階のトレンドが存在してます。
ここには、エリオット波動サイクルのある特徴が隠れています。
それは、推進波トレンドは、ひと回り上の段階のトレンド方向に現れるという特徴です。
ひと回り上の段階のトレンド方向に現れる推進波
5つの波の推進波は、トレンドを押し進めていくためのフォーメーションです。
そのため、エリオット波動サイクルにおける推進波は、ひと回り上の段階のトレンド方向と同じ方向に現れてきます(※あくまでも、ひと回り上の段階)。
上図の推進波トレンドは、ひと回り上の段階の推進波トレンドとひと回り上の段階の修正波トレンドの方向にのみ現れているのがお分かりいただけると思います。
※ただし、ひと回り上の段階が修正波トレンドの場合は、修正波が推進波の役割をすることがある(たとえば、フラット修正波3-3-5の最初の3)
つまり、このエリオット波動サイクルの特徴を利用すれば、ひと回り上の段階のトレンドを推定することができるようになるわけです。
「展開しているフォーメーションは完成したか? それともまだ継続中か?」というような場合には、推進波の現れ方を確認してみてください。
ひと回り上の段階のトレンドが意外と簡単に推定できるようになります。
ユーロドルチャートに見る推進波の現れ方
エリオット波動サイクルで、相場の現在地は上昇3波延長型衝撃波の最後の5波動目というところまでは推定できています。
しかし、5波動目の5-5が、黒丸のポイントで終わったかどうかというところまでは判断できていない局面です(トレンドの方向が判断出来ていない)。
最後の5-5波動目は、1と4がヒゲの部分重複していますが、5波延長型衝撃波にも見える微妙な展開。
このような時に、先程のエリオット波動サイクルの特徴を利用します。
もし、黒丸のポイントでトレンド転換しているならば、次の下降波動のフォーメーションは推進波であるはずです。
チャートを確認すると、次の下降波動は推進波である可能性が高いので、「やはり黒丸のポイントでトレンドが変わっているのでは?」という推定ができるようになるわけです。
そして、トレンド転換後の最初の下降推進波は、衝撃波の1波動目であったことも分かります。
このように、トレンドがどちらにあるのか迷ったときには、エリオット波動サイクルの特徴である推進波の現れ方を確認してみてはいかがでしょうか。
きっと、トレンドがどちらの方向にあるのかということが高い精度で確認できるようになってくると思いますよ。
以上、エリオット波動サイクルで相場の現在地とトレンドを捉える方法を綴ってみました。
※エリオット波動のカウントのコツについては「エリオット波動の見つけ方 横と縦で次の展開を見極める」をご覧ください
サイクルで読み解く現在地とトレンドまとめ
- エリオット波動サイクルを理解すると相場のおおよその現在地が解るため、トレードのシナリオが描けるようになる
- エリオット波動サイクルは5波+3波(又はその変形)の合計8波で構成される
- 相場には段階があり、各段階は8波1サイクルのフラクタル構造になっている
- 上位の段階の波動展開を意識すると、現在地推定の精度がさらに高くなる
- エリオット波動サイクルを使うと、トレンドの方向も解るようになる
- エリオット波動サイクルのトレンドは推進波トレンドと修正波トレンドの2つがある
- 推進波はひと回り上の段階のトレンド方向に現れるという特徴がある
エリオット波動サイクルはとてもシンプルな理論ですが、ここをしっかり理解しておくと「相場が今どの位置にあるのか?」という相場のおおよその現在地や、「これからどちらの方向に進もうとしているのか?」というトレンドを捉えることが出来るようになります。
エリオット波動サイクルで相場の現在地やトレンドがイメージできていれば「勢いよく上がってきた(下がってきた)のでなんとなくエントリーしてみた」というトレードは無くなってくるのではないでしょうか。
きっと、「相場を冷静に分析し、ポジションを建てる充分な根拠を持ち、シナリオを描いてからエントリーする」ことができるようになると思いますよ。
※エリオット波動のまとめ記事は「エリオット波動を学ぶための完全マップ/基礎から応用までのまとめ」をご覧ください
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