エリオット波動を学ぶための完全マップ/基礎から応用までのまとめ

当記事は、エリオット波動の基礎から応用までの知識をまとめたものです。


エリオット波動のイメージ図


「エリオット波動は難解だ!」

「エリオット波動をマスターするには時間がかかりそうだ!」

このように、先入観でエリオット波動は難しいと考える人もいるようです。


しかし、実はエリオット波動はとてもシンプルで、またとても楽しく相場を予想できる指標なんです。そして、効率よく学べば、意外と短期間で自分なりのカウントができるようになります。


そこで、エリオット波動は「どういうもなのか?」、「どうやって波を数えるのか?」などを、これからエリオット波動をマスターしようとされている方にも分かり易いようにまとめてみました。


この記事を読めば、エリオット波動を使ってFXや株式相場などを分析する方法が分かるようになると思います。





 目次 


1.エリオット波動理論とは?


2.エリオット波動理論の概要


3.エリオット波動のサイクル


4.エリオット波動の推進波【衝撃波の特徴】

  • 推進波の主役/衝撃波の必然的な3つのルール
  • 衝撃波のガイドライン/チャネリング
  • 衝撃波のガイドライン/フェイラー(トランケーション)
  • 衝撃波のガイドライン/波の個性


5.エリオット波動の修正波/4つの調整パターンと特徴

  • 修正波はどこに現れる?
  • 修正波の4つの調整パターン
  • 修正波の段階の見極め
  • 修正波のタイプとオルターネーション


6.これがマスターできればエリオット波動使いの強者

  • エリオット波動に現れるフィボナッチ
  • 衝撃波のエクステンション(波の延長)
  • エリオット波動のフラクタル構造


7.実際のチャートで見るエリオット波動

  • ドル円週足チャートで見るエリオット波動
  • ユーロドル日足チャートで見るエリオット波動


8.【まとめ】エリオット波動はシンプルでとても楽しい







1.エリオット波動理論とは?



まずは、エリオット波動理論の成り立ちについて。


エリオット波動は、ラルフ・ネルソン・エリオットが見つけ出した株式相場などを分析するための理論です。



ラルフ・ネルソン・エリオット(1871年~1948年)

■カンザス州メアリーズビル生まれ(のちにテキサス州サンアントニオ)
■1890年代半ばに鉄道会社(中央アメリカとメキシコ)の会計士
■その後アメリカに戻りニューヨークでコンサルタント事業
■1924年、アメリカ合衆国国務省からニカラグアのチーフアカウンタントに任命
■腸疾患のため58歳で早期退職→1930年初頭から株式市場の研究を開始



エリオットは病気になりアメリカの自宅で長い闘病生活を送った時に、その時間を利用してダウ平均の過去の値動きを徹底的に調べたそうです。

そして、相場は紙飛行機のようにランダムに動いているのではなく、予測可能な自然の法則で動いているということに気付きました。

1938年に出版された「The Wave Principle 波動原理」、のちに出版された「Nature's Law 自然の法則(フィボナッチとの関係)」は、その理論がまとめられたものです。

その後、エリオット波動の熱心な研究者であるA.J.フロストとロバート.R.プレクターによって、さらに洗練された理論となり、現在では世界的にとてもメジャーな取引手法となっています(2人の共著したものがベストセラー「Elliott Wave Principle」)。


エリオット波動理論はチャールズ・ダウのダウ理論と似ていて、それをエリオット波動理論で説明できる部分も多くあります。

すでにダウ理論を理解している方であれば、すんなりとエリオット波動理論をマスターできるのではないでしょうか。




2.エリオット波動理論の概要



次は、エリオット波動理論の概要です。

エリオット波動理論は大きく分けて以下のような項目に分けることができます。



エリオット波動理論の概要


■エリオット波動のサイクル(5波+3波のフラクタル構造)


■波のフォーメーション

  • 推進波(2種類5つのフォーメーション)
  • 修正波(4つの調整パターン)


■エリオット波動のガイドライン

  • オルターネーション(交互の法則)
  • フェイラー(トランケーション)
  • チャネリング
  • エクステンション(波の延長)
  • 波の個性
  • 比率の関係(フィボナッチ)
  • エリオット波動の定石





エリオット波動の基礎は「サイクル」と「波のフォーメーション」で、この項目を学べば基本的にカウントできるようなります。

そして、そのカウントの補助をしてくれるものが「ガイドライン」です(この他にもガイドラインはあります)。

ガイドラインは必ずそのようになるというものではありませんが、その傾向が強いものばかりです。

波のカウントに優先順位を付ける場合など、かなり力になってくれます。




3.エリオット波動のサイクル


エリオット波動8波1サイクルイメージ
ここからは、エリオット波動理論の項目を解説していきます。まずはサイクル。


エリオット波動理論は相場の波をサイクルとして捉えます。



エリオット波動のサイクル


5つの波+3つの波(又はその変形)がひとつのサイクル

ひとつのサイクルが終わると相似のサイクルが再び現れ、ひと回り上の段階のトレンド方向に波のように進んでいく



そのサイクルは、トレンド方向に大きく進む5つの波と、その動きを調整する3つの波(又はその変形)で構成され、とてもシンプルです。


トレンドを力強く押し進めていく5つの波は推進波(Motive Waves)、その動きを調整する3つの波を修正波(Corrective Waves)といいます


そして、この5波+3波のサイクルをくり返しながら、寄せては返し波のように相場はトレンド方向に進んでいると考えます。

※最終的にはそれらの波が構成するよりもひと回り大きな段階の5波+3波が作り出されます(後で触れますが、これをフラクタル構造といいます)。


エリオット波動サイクルはとてもシンプルですが、エリオット波動理論で重要なポイントになるので覚えておいてください。



このエリオット波動サイクルをマスターすると「相場の現在地」がつかめるようになり、実際のトレードにおいて大きな武器となってきます。

エリオット波動が「相場の未来予想図」であるといわれる所以がここにあります。




4.エリオット波動の推進波【衝撃波の特徴】



次は、波のフォーメーションです。まずは5つの波の推進波から。


5つの波の推進波は、2種類5つのフォーメーションしかありません。



エリオット波動の推進波


ダイアゴナルトライアングル(Diagonal Triangle)

・リーディング・ダイアゴナルトライアングル

・エンディング・ダイアゴナルトライアングル


衝撃波(Impulse Waves)

・1波延長型衝撃波

・3波延長型衝撃波

・5波延長型衝撃波



推進波の構成は、2つのダイアゴナルトライアングルグと、3つの衝撃波だけでとてもシンプル。


しかも、そのほとんどは衝撃波のフォーメーションで現れてくるので、推進波は取り組みやすいといえます。


実際のトレードでは、トレンド方向に力強く進んでいくこの衝撃波の5つの波に、いかにタイミングよく乗れるかが収益を上げるためのポイントです。



※リーディング・ダイアゴナルトライアングルとエンディング・ダイアゴナルトライアングが現れる場所は限定的です。

推進波の2種類5つのフォーメーションの詳細は「エリオット波動の推進波 その種類と特徴のまとめ」をご覧ください。



推進波の主役/衝撃波の必然的な3つのルール



エリオット波動衝撃波ルールイメージ

衝撃波の5つの波には、必然的な3つのルールと、いくつかの特徴(ガイドライン)があります。まずはルールから。


ルールはとても簡単な3つだけです。



衝撃波の3つのルール


■ルール1: 2波動目は1波動目の始点を越えない

■ルール2: 1波.3波.5波で3波動目は一番小さな波動にならない ※2番目はOK

■ルール3: 1波動目と4波動目は重複しない



衝撃波のルールはたったこれだけなんです。 


このルールをマスターすれば、衝撃波を自分なりに楽しくカウントすることが出来てしまいます。

ホントにこれだけと思われるかもしれませんが、本当です。 みなさん先入観で、エリオット波動理論は難しいと思われていますが、実はとってもシンプルなんです。


※衝撃波の3つのルールの詳細はエリオット波動におけるサイクルと必然的なルールとは?をご覧ください



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衝撃波のガイドライン/チャネリング

エリオット波動のチャネルのイメージ



ここからは、この衝撃波のカウントの手助けをしてくれる特徴(ガイドライン)です。



実は、エリオット波動の衝撃波はチャネルラインに沿ってトレンド方向に進んでいくという特徴があります。


衝撃波は、このチャネルラインを使ってカウントするとグッとその精度が上がってくるとともに、「この辺りで4波動目が終わり5波動目が始まるぞ!」、また「5波動目がチャネルラインにタッチしたから衝撃波が完成したぞ!」などと先の展開も読めるようになってきます。

ここまでくると、エントリーや利益確定がタイミングよくできるようになり、実際のトレードで大変役立ってくれるようになります。

ちなみに、5つの波で展開される衝撃波は、その内部波動の1・3・5波動目も推進波で展開されるので(5-3-5-3-5)、その内部波動にも同じようにチャネルラインを使うことができます。


エリオット波動のカウントをするときには、ぜひこのチャネリングを併用してみてください。きっと驚かれると思いますよ。


※エリオット波動で使う3つのチャネルラインについては、「チャネルラインはこの3つを使え! 引き方と目的まとめ」をご覧ください。



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衝撃波のガイドライン/フェイラー(トランケーション)


5つの波で相場を力強く押し進める衝撃波。しかし、その最後の5波動目は、ときに前の3波動目の終点を越えてこれないことがあります。

これをフェイラーといいます(トランケーションともいわれます)。

衝撃波の3波動目があまりにも遠くに進んでしまった時に現れ(3波延長型衝撃波)、最後の5波動目にその力が残っていないために起こる現象です。

3波動目が1波動目の3.00倍や4.00倍などと大きくなった場合、「ひょっとすると5波動目はフェイラーかもしれないぞ!」とイメージしておくと臨機応変に対応できるようになります。



衝撃波のガイドライン/波の個性


衝撃波の5つの波は、それぞれに波の個性というものがあります(ガイドライン)。

衝撃波はエクステンションをする波動の違いによって3つの種類があり(のちほど説明)、その個性が微妙に異なります。

とはいえ、衝撃波内部波動の5つの波は、一般的には以下のような波の個性があります(上昇トレンドのケース)。




衝撃波の波の個性


■1波動目=トレンド転換後の足掛かりの波動で、それ自体推進波で展開される。建設的な波動で出来高を伴いながら上昇していく。

■2波動目=3波、又はその変形で展開される修正波動。多くの投資家はトレンド転換を認識していないため、この波動目で多くの売りが浴びせられる。また、疑心暗鬼から多くの投げ売りも出て深いリトレースとなることが多い。

■3波動目=エリオット波動では、この3波動目が(この波動自体も衝撃波で展開される)最も勢いがある波動になることが多く、出来高も明らかに増加する。また、チャートには陽線が続いて現れるようになる。

■4波動目=3波、又はその変形で展開される修正波動。トレンドが認識された4波動目は売りと買いが交錯する。修正2波動目とは異なり、その多くは横這いの展開となる。1波動目の価格帯に割り込むことはない。

■5波動目=トレンド最後の上昇で推進波で展開される。通常、3波動目の出来高を超えてくることはないが、為替相場ではこの5波動目がエクステンションをして1.3.5波の中で一番大きな値幅となることがよくある。





これらはあくまで目安となるものですが、群集心理が反映される衝撃波の5つの波では、このような特徴がよく現れます。


この波の個性は、カウントに困ったときや、優先的なカウントを見つけるときに大いに役立ってくれます。


※衝撃波の5つの波だけではなく、修正波の3つの波にも波の個性があります。詳しくは、優先的なカウントが見つかる! エリオット波動の「波の個性」をご覧ください。



以上、ここまではエリオット波動の推進波の主役である衝撃波についてでした。



次の修正波をマスターすれば、エリオット波動の多くの部分を理解したといっても言い過ぎではありません。ただ、修正波は少し難しくなります。




5.エリオット波動の修正波/4つの調整パターンと特徴



次は、3つの波の修正波フォーメーションです。


5つの波の推進波でトレンド方向に進んだ波を調整するのが、3つの波(またはその変形)で展開される修正波です(調整波ともいわれます)

メジャートレンドに進んでいく推進波がその目標に向けてスイスイと進んでいくのに対し、メジャートレンドとは逆の動きとなる修正波はその目標に到達するまで複雑な動きで進んでいきます。



修正波はどこに現れる?



エリオット波動の修正波はどのようなポイントに現れるのか? 先程の5つの波で構成される衝撃波(推進波)で考えてみます。


先ほども少し触れましたが、衝撃波の内部波動は1波動目(5)-2波動目(3)-3波動目(5)-4波動目(3)-5波動目(5)で、トレンド方向に進む1波動目・3波動目・5波動目それ自体推進波で展開されるます。

そして、その動きを調整するのが2波動目・4波動目です。

つまり、修正波は5つの波で構成される推進波の2波動目と4波動目に現れるというわけです。



修正波の4つの調整パターン


エリオット波動の修正パターンイメージ


エリオット波動理論の修正波は4つの調整パターンしかありません

単純な3つの波で構成されるものと、その変形で構成されるものがあります。

これらの修正パターンやその特徴を覚えれば、ほぼエリオット波動の修正波はマスターしたことになります。



修正波4つの調整パターン


■調整パターン1: ジグザグ修正波(3つの波 内部波動は5-3-5)

■調整パターン2: フラット系修正波(3つの波 内部波動は3-3-5)

■調整パターン3: トライアングル系修正波(その変形 内部波動3-3-3-3-3)

■調整パターン4: 複合型修正波(その変形 上図はフラットとトライアングル)



※推進波と区別するため、単純な3つの波からなる修正波はabcで表記され、その変形である複合修正波はWXYXZ、トライアングルはABCDEなどで表記されます。



エリオット波動の修正波は4つの調整パターンしかないとはいえ、この4つの調整パターンから派生するフォーメーションにはかなりのバリエーションがあります。

特に複合型修正波は、フラット、ジグザグ、トライアングルの組み合わせで構成され難しいので、少し慣れてからマスターした方がいいかもしれません。


修正波は推進波より難しいですが、チャートの動きを見ていれば「ジグザグ修正を展開しているぞ!」、「拡大フラット修正だ!」と分かるようになります。

おそらく、この辺りを実際のチャートで確認できるようになると、エリオット波動の凄さが実感できてくると思いますよ。


※エリオット波動の4つの調整パターンと、そこから派生するフォーメーションの詳細は「エリオット波動で知っておくべき4つの調整パターン」をご確認ください。



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修正波の段階の見極め


修正波のカウントでは段階の見極めが必要です(段階については、のちほど説明します)。

修正波は、同じ段階のように思える展開であっても、実はひとつ下の段階の展開だったということがよくあります。

たとえば、単純な3波構成のジグザグ(5-3-5)で修正波が終わったと思えるような展開であっても、その3波構成のジグザグは「トライアングル修正波の内部波動A波だった!」、「複合型修正波の内部波動W波だった!」というようなこともあるわけです。

修正波のカウントは決め打ちすることなく、可能性のある展開をイメージしつつ臨機応変に対応していくことが求められます。

※修正波における段階については「段階の見極めが必要! 道のりがひとつではない修正波」をご覧ください



修正波のタイプとオルターネーション


エリオット波動の修正波は、リトレースの大きさなどによって2つのタイプに分けられます。



修正波の2つのタイプ


■急こう配でリトレースが大きくなるタイプ(ジグザグなど)

■横這いでリトレースが小さくなるタイプ(フラットやトライアングルなど)



修正波は推進波の2波動目と4波動目に現れることはすでに触れました。

エリオット波動サイクルでは、修正2波動目は急こう配で1波動目の値幅の多くをリトレースするタイプ、また修正4波動目は横這いで小さなリトレースで終わるタイプの修正パターンになるのが一般的です。

しかし、少ないながらも修正2波動目が横這いの展開になることもあります。その場合、修正4波動目は逆に急こう配の修正パターンが現れます。

このように、異なる2つのタイプ修正波が交互に現れてくる法則をオルターネーションといいます。

「修正2波動目は急こう配のジグザグだったから、次の修正4波動目は横這いの修正パターンが現れるぞ!」

オルターネーションを知っていれば、こんな芸当も出来るようになってきます。


※オルターネーションについては「エリオット波動のガイドライン フェイラーとオルターネーション」をご覧ください



以上、波のフォーメーションについてのまとめでした。



もうこれだけで充分楽しく波動カウント出来るのですが、エリオット波動の強者を目指すのなら、次のステップでマスターすべきものがあります。






6.これがマスターできればエリオット波動使いの強者



波動使いの強者を目指すと言っても、そんなに難しいものではありません。 少し慣れた段階でマスターするものが3つあります。


エリオット波動に現れるフィボナッチ


エリオット波動の衝撃波に現れるフィボナッチイメージ

エリオット波動理論の数学的基盤はフィボナッチで、同じ「自然の法則」であるフィボナッチと深い関係にあります。

したがって、エリオット波動のフォーメーションでは、様々な場所でフィボナッチが現れてきます。


衝撃波に現れるフィボナッチ


衝撃波のフォーメーションでは、2波・4波がどれだけ押し(戻し)たのかを計る「フィボナッチリトレースメント」、1波・3波・5波の大きさを計る「波の倍率」、全体の「黄金区分(黄金分割)」、「ひとつの波に対する他の波の時間」などに現れてきます。


たとえば、3波延長型衝撃波では、




フィボナッチリトレースメント

■2波=1波×0.500、0.618

■4波=3波×0.382、0波~3波×0.382


波の倍率

■3波=1波×1.618、2.618、3.00、4.00

■5波=1波×1.00、1.618  5波=3波×0.618


黄金区分(黄金分割)

■4波最安値で衝撃波全体が0.618と0.382に黄金区分
※4波の最安値は終点や最高値になることもある




このようなフィボナッチがよく現れてきます。

「2波動目が1波動目×0.618で勢いよく反転してきたぞ! 3波動目を狙ってタイミングよくエントリーするぞ!」というように、フィボナッチは実際のトレードでエントリーポイントを示唆してくれ勝率アップにかなり貢献してくれます。


ネット上ではこの衝撃波に現れるフィボナッチを一律的に自動で計算してくれるものを目にすることがありますが、波動使いがこのようなものを使うことはまずありません。

どこのFX会社でも用意されている取引ツールを使えば簡単に分かるということもありますが、衝撃波には3つのフォーメーションがあり(のちほど説明)、それぞれで異なるフィボナッチが現れてくるからです。

なので、結局「どのフォーメーションでどんなフィボナッチが現れてくるのか」を知らないとフィボナッチを正しく使うことはできないというわけです。


3つの衝撃波には理想的な形というものがあり、またこの形に近づこうとする傾向が強くあります。「どのフォーメーションでどんなフィボナッチがあらわれてくるのか」をマスターしておけば、波の節目をピンポイントで捉えることも不可能ではありません。


このフィボナッチは衝撃波だけではなく、修正波のフォーメーションにも現れてきます。


修正波に現れるフィボナッチ

修正波の展開図にフィボナッチを示した図


修正波のフォーメーションに現れるフィボナッチも、衝撃波と同じくフォーメーションの種類によって現れてくるフィボナッチは変わってきます。

たとえば株式相場では、ジグザグ修正波はa波=c波(1.00)、b波=a波×0.500、0.618、0.786(b波自体がジグザグである場合)、フラット修正波はa波=b波=c波(1.00)によくなります。

しかし、為替相場(FX)では、市場を主導している通貨の影響を受けて理想的な形にならないことや、上位の段階(のちほど説明)の目標ポイントに到達するため、ときにabc修正のc波が大きくなることもあります。


ここまで、エリオット波動のフォーメーションに現れるフィボナッチについて説明してきましたが、注意してほしいのはフィボナッチのテクニカルポイントに到達した段階で直ちにトレンドが変わるといわけでないということです。

たとえフィボナッチのテクニカルポイントに到達したとしてもフォーメーションが完成するまではトレンドは変わりません。

優先されるのは、あくまでもフォーメーションの完成です(フィボナッチのテクニカルポイントをヒゲの部分よく行き過ぎる)。


※エリオット波動のフォーメーションに現れるフィボナッチのまとめは「エリオット波動の計算/フィボナッチで比率分析する方法を徹底解説」をご覧ください。



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衝撃波のエクステンション(波の延長)

エリオット波動の3つのエクステンションイメージ


トレンド方向に大きく進んでいく5つの波の衝撃波(推進波)。 この衝撃波の1.3.5波の内、1つの波はエクステンションをしてきます。


エクステンションとは波の延長のことで、エクステンションをした波動(延長波)は、1.3.5波の中で一番大きな波動になります


少し表現が難しいのですが、簡単に言うと1.3.5波のどれか1つに、大きな衝撃波が内包されるというガイドラインです。

通常、3波動目がエクステンションをして最も大きな波動となることが多いのですが、なぜか為替相場(FX)では1波動目や5波動目もよくエクステンションをしてきます。

1波動目がエクステンションをした衝撃波は、1波延長型衝撃波といいます。また、3波動目がエクステンションをした衝撃波を3波延長型衝撃波、そして5波動目がエクステンションをした衝撃波を5波延長型衝撃波といいます。

つまり、衝撃波には3つのフォーメーションがあるというわけです。

このエクステンションをマスターすると、「1波動目と3波動目がほぼ同じ大きさだ。ということは5波動目がエクステンションをして激しく動いてくる可能性が高いぞ!」などと、トレンド方向に進む波動の値幅を事前にイメージでき、優位性のある視点でトレードに臨むことができるようになってきます。


※エクステンションの詳しい説明は「エリオット波動 衝撃のエクステンションを徹底解剖!」をご覧ください


エクステンションは少し難しいかもしれませんが、波動カウントを続けていると自然に分かるようになってきます。 まずは習うより慣れよでしょうか。




エリオット波動のフラクタル構造



エリオット波動のフラクタル構造イメージ



エリオット波動理論において、相場は5つの波の推進波と3つの波(又はその変形)の修正波の合計8つの波で1つのサイクルを構成し、それを繰り返しながらトレンド方向に進んでいくことはすでに触れました。

この8波1サイクルの繰り返しが完璧に進んでいくと、ひと回り大きな段階の相似の8波1サイクルが作り出されます(上図参照)。そして、このサイクルの流れはこれで終わることなく無限に続いていきます。

結果、相場にいくつもの段階(Degree)ができあがり、どれだけ上の段階を見ても、逆にどれだけ下の段階を見ても相似のエリオット波動サイクルが現れてくることになります。

これをフラクタル構造といいます。

※R.N.エリオットは、グランドスーパーサイクル~サブミニュエットの9つの波の段階に名称を付けています。


「そんなことあるわけないだろ!」と思われるかもしれませんが、本当です。

例えば、日足チャート(その段階)に現れた推進波の1波動目と2波動目を、時間足チャート(ひとつ下の段階)で見てみると、5+3の8波で構成されるのが確認できるはずです。

このフラクタル構造を利用して上位の段階を確認すると、相場のおおよその位置や将来の見通しなどのヒントが得られ、カウントの精度は各段に上がってきます。

また、トレードにおいて、どのポイントで取引しようとしているのかがイメージできるようになることから、その勝率も間違いなくアップしてきます。

「日足段階1波動目の時間足段階3波動目を狙ってエントリーしよう!」

ここまでくればエリオット波動の強者です。


※フラクタルの縦軸を使って相場の現在地をより深く捉える方法は「泣けるほど使える! 相場に現れるフラクタルとは?」をご確認ください。



この他にも、このフラクタルの縦軸にはトレードのヒントがたくさん隠れています。

「この段階は今どちらの方向に進もうとしているのか?」という段階ごとのトレンドの方向が解るようになるのもそのひとつ。

トレンド方向にポジションを建てるのは、リスク管理の面から考えてもとても有益。

エリオット波動では修正波のフォーメーションが注目されることが多いのですが、実はエリオットの真骨頂はここにあります。

ぜひフラクタルの縦軸を使って優位性の高いトレードポイントを見つけてください。


※エリオット波動のフラクタルを使ってトレンド方向を見極める方法は「エリオット波動サイクルで読み解く相場の現在地とトレンド」をご覧ください



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7.実際のチャートで見るエリオット波動



ここまでマスターすると、エリオット波動のサイクルが顕在化します。

それまでランダムに動いているようにしか見えなかった相場の波が、エリオット波動のサイクルを正確に刻みながら進んでいることが分かるようになるはずです。



ドル円週足チャートで見るエリオット波動
ドル円衝撃波チャートのエリオット波動カウント

エリオット波動は実際のチャートで上のように現れてきます。

チャートの上昇波動は、ドル円為替相場に現れた5波動目がエクステンション(延長波を内包)をした5波延長型衝撃波です。

通常の3波延長型衝撃波では上位の段階の目標に到達できないため、最後の5波動目がエクステンションをしてきたものと思われます。

※エンディング・ダイアゴナルトライアングルでトレンド転換した場合、反転一発目の波動は、その始点が目標になるというガイドラインがある。ちなみに、5波延長型衝撃波に対する修正波は、その5-2の安値でサポートされるというガイドラインもある。

この推進波は、エリオット波動の理論(衝撃波3つのルール)通りにトレンド方向に進み、また至る所にフィボナッチが現れていることが確認できると思います。4波動目(トライアングル)の最安値で、衝撃波全体が0.382と0.618の黄金比率で区分されてるのはそのひとつです。

エリオット波動理論を使えば波の節目をピンポイントで狙うことも不可能ではありません。



ユーロドル日足チャートで見るエリオット波動

ユーロドル日足チャートのエリオット波動カウント
次はユーロドル為替相場に現れた3波動目がエクステンション(延長波)をした3波延長型衝撃波の実際のチャートです。

推進波で一番よく現れるのが、この3波延長型衝撃波。段階を問わず、相場の至る所に現れてきます。

このユーロドル日足チャートの衝撃波は、衝撃波全体だけではなく、その内部波動の延長波(5波延長型衝撃)や、さらに下の段階の衝撃波もチャネルラインに沿って進んでいることが確認できます(1波動目はリーディング・ダイアゴナルトライアングル)。

また、リトレースメント、波の倍率、そして各段階の黄金区分にフィボナッチの理想的な比率が現れています。

そして、クライマックスのトレンド転換ポイントの終点は、2-4チャネルラインの1波ラインとフィボナッチの波の倍率(5波=3波×0.618)が重なるポイント。


こうしてみると、エリオット波動はフラクタル構造になっており、各段階の波動が正確にサイクルを刻みながら同時並行で進んでいるということがいえるのではないでしょうか。





8.【まとめ】エリオット波動はシンプルでとても楽しい



エリオット波動のカウントは、1つ波動が進むごとに次の波動の終点を予想していきます。この作業がとても楽しく、どこか推理ゲームに似ています。

修正波動は1波動目が5つの波であればジグザグ修正だと見当がつくのですが、3つの波の場合、様々な修正パターンの可能性が出てきます。

そうなると、一発で修正波形を当てるのは難しく、修正しながらカウントしていくことになります。

この修正しながらカウントしていく作業がとても楽しいんです。

これからエリオット波動を始める方にお伝えしたいのは、カウントは修正しながら進めていくのが基本であるということです。

一発で当たらないとガッガリするのではなく、1波進むごとにあれやこれや考えながら楽しくカウントしてもらいたいと思います。


エリオット波動の理論はとてもシンプルなので、効率よく学べば短期間で自分なりのカウントができるようになります。そして、繰り返しカウントすることでその精度はグングン上がっていきます。

ぜひ、エリオット波動を使って、自分でカウントしてみてください。きっと驚かれると思いますよ。


※エリオット波動を学ぶ手順については「エリオット波動入門/おすすめ本でエリオット波動を効率的に学ぶ手順」をご覧ください。


以上、エリオット波動を学ぶための完全マップ/基礎から応用までのまとめでした。

更新日 2020年4月5日