フィボナッチピボット(Fibonacci Pivot)は相場で使われるテクニカルですが、効果的に使うポイントがいくつかあります。
エリオット波動理論と組み合わせて使うのもそのひとつです。ともに、「自然の法則であるフィボナッチ」が数学的な基盤で相性もバッチリです。
そこで今回は、フィボナッチピボットをエリオット波動と組み合わせて使う場合に意識しておくべきポイントなどを綴ってみたいと思います。
「相場の波(サイクル)の節目を予測する精度を上げたいなぁ」と考えている方は、ぜひフィボナッチピボットを使ってみてください。きっと驚かれると思いますよ。
フィボナッチピボットとは?
まずはフィボナッチピボットがどのようなテクニカルなのか、おさらいしてみます。
フィボナッチのエッセンスを加えたPIVOT
相場分析ではピボットが好んでよく使われます。
ピボットは、テクニカル・トレーディング・システムの第一人者であるJ・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアが開発したもので、当日の値動きの目標値幅を予想するテクニカル指標(他にもRSIやADXなどを開発)。
視覚的に分かり易いということもあり、ピボットのテクニカルポイントは多くの投資家の注目を浴びます。
ピボットのテクニカルポイント付近には新規注文や損切りの逆指値などが置かれていることが多く、反転のスイッチがそこで入り、結果的にそのポイントが「波の節目だった!」ということもよくあります。
実は、この一般的に使われているピボットの他に、もうひとつ注目されるピボットがあります。
それがフィボナッチピボット。
フィボナッチピボットはロバート・クラウスが開発したもので、J・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアが開発したバランスポイントはそのまま残し、そこに自然の法則であるフィボナッチのエッセンスを加えたピボットです。
このフィボナッチピボットも、かなり機能します。
日本ではあまり知られていませんが、海外ではポピュラーなピボットで、そのテクニカルポイントは多くの注目を浴びます。
当然、テクニカルポイントは異なってきますが、まずはそれぞれどのようにその数値が算出されるのか見てみましょう。
※フィボナッチについてはこちらで解説しています。
算出方法の違いと特徴
J・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアが開発したPIVOTは、前日の値動き(高値・安値・終値)から算出され、当日の値動きの目標値幅を予想するテクニカルです。前日の売り買いの圧力の流れは、当日に引き継がれる傾向が強いと想定され開発されています。
まず、前日の値動きから当日の値動きの中心になるであろうと予想されるピボットポイント(回転軸とも言われます)を求め、そこから当日の値動きのサポートラインとレジスタンスラインを算出。
「計算式は知らなくてもいいよ!」という方が多いと思いますが、一応、下が計算式です。
■P(ピボットポイント)=(前日高値+安値+終値)÷3
■S1(サポート1)=P-(前日高値-P)
■R1(レジスタンス1)=P+(P-前日安値)
■S2(サポート2)=P-(前日高値-安値)
■R2(レジスタンス2)=P+(前日高値-安値)
■S3(サポート3)=S1-(前日高値-安値)
■R3(レジスタンス3)=R1+(前日高値-安値)
※J・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアは、このPIVOTを「リアクション・トレンド・システム」としています。詳しくは「ワイルダーのテクニカル分析入門 オシレーターの売買シグナルによるトレード実践法(パンローリング)」に記載されています。
「ワイルダーのテクニカル分析入門 オシレーターの売買シグナルによるトレード実践法(パンローリング)」はこちら
そして次はフィボナッチピボットの計算式。
■P(ピボットポイント)=(前日高値+安値+終値)÷3
■S1(サポートゾーン1)=P-(前日高値-安値)×0.5
■R1(レジスタンスゾーン1)=P+(前日高値-安値)×0.5
■S2(サポートゾーン1)=P-(前日高値-安値)×0.618
■R2(レジスタンスゾーン1)=P-(前日高値-安値)×0.618
■S3(サポートゾーン2)=P-(前日高値-安値)×1.0
■R3(レジスタンスゾーン2)=P-(前日高値-安値)×1.0
■S4(サポートゾーン2)=P-(前日高値-安値)×1.382
■R4(レジスタンスゾーン2)=P-(前日高値-安値)×1.382
※日本ではピボットについては、「しろふくろう」さんが有名です。「FX最強のテクニカル しろふくろうのPIVOTトレード術」 参考にされてみてはいかがでしょうか。
「FX最強のテクニカル しろふくろうのPIVOTトレード術」はこちら
フィボナッチピボットはサポートとレジスタンスをゾーンで捉え、それぞれのラインは自然の法則であるフィボナッチを加味して算出されます。
実際のチャートでは上のように表示されます(マルチタイムで1時間足にマンスリーフィボナッチピボットを表示)。
このチャートでは、レジスタンスゾーン1のレジスタンスライン2でスイッチが入り、ピタリと跳ね返され、結果、そのポイントが波の節目になっていることが分かります。
このようにピボットは、
- 視覚的に分かり易いため、仕掛けるタイミングが計り易い
- 波の節目をピンポイントで狙えるため、ローリスクでハイリターンなトレードができるようになる(逆張りの場合)
という特徴のあるテクニカル指標で、これを使わない手はないと思います。
どっちのPIVOTを使う?
問題は「どっちのPIVOTを使うか?」です。
これは実際に2つのPIVOTを使ってみて、自分がよく機能すると思える方を使うのが一番ではないでしょうか。
ただ、個人的にはフィボナッチピボットの方がよく機能すると考えています。また、エリオット波動をメインに相場分析をするのであれば、フィボナッチピボットがおすすめです。
なぜなら、エリオット波動の数学的基盤は、フィボナッチピボットと同じく「自然の法則であるフィボナッチ」であるからです。
エリオット波動を使っている方は、ぜひフィボナッチピボットを試してみてください。相性がいいと思いますよ。
エリオット波動の目線で見るフィボナッチピボット
エリオット波動を使って相場を分析すると、トレンド転換ポイント(波動の節目)はチャネルライン、フィボナッチ(波の倍率・リトレース・黄金区分)などの様々なテクニカルと重複してくることに気づきます。
そして、フィボナッチピボットもそのひとつです。
ここからは、エリオット波動でフィボナッチピボットを使う場合のポイントを綴ってみます。
目標値幅と相場の段階(フラクタルの次元)
相場のチャートを見ると、その足の大きさは前の足の大きさとほぼ同じ大きさであることが多いことに気づきます(大きな値幅の足が続いたり、逆に小さな値幅の足が続いて現れる)。
このことから、その足には前の足の流れからの目標値幅があり、そしてその目標値幅を達成しようとするモメンタム(Momentum)があるということがわかります。
このモメンタムを利用したテクニカルがピボットで、前日の値動き(高値・安値・終値)から算出され、当日の値動き(目標値幅)の予想するために使われるのが一般的です。
しかし、エリオット波動を使われている方はご存じだと思いますが、相場にはフラクタルの次元による段階(Degree)があり、このモメンタムはどの段階にも同じように現れてきます。
つまり、日足の段階だけではなく、月足、週足、そして時間足の段階にも同じようにフィボナッチピボットは使えるというわけです。
時間が変わるタイミングで勢いよく動き出すという展開を目にすることはないでしょうか?
これは、前の時間足の流れからの目標値幅を達成するために、その足のモメンタムが新しく動き出すためです。
たとえば、上昇トレンドで、日本時間のPM4:00(欧州市場)から勢いよく動き出し、フィボナッチピボットのレジスタンスゾーンで目標値幅を達成→その後の調整→PM5:00から再び勢いよく動き出しレジスタンスゾーンで同じように目標値幅を達成といった展開などはよく目にするところです。
1日のデイリーフィボナッチピボットだけでなく、マンスリーフィボナッチピボットやウィークリーフィボナッチピボットなども使ってみてはいかがでしょうか?
ちなみに、フィボナッチピボットの設定は、下の数値です。
パラメーター
■1時間足の段階 60
■日足の段階 1440
■週足の段階 10080
■月足の段階 43200
※フラクタルの次元による相場の段階については、こちらをご覧ください。
マルチタイムで表示すると効果的
実は、フィボナッチピボットは、その段階と同じ段階のピボットを表示させるとごちゃごちゃします。なので、マルチタイムでひとつ上の段階のフィボナッチピボットを表示させると視覚的に分かり易くなり効果的です。
上は、1時間足チャートにデイリーフィボナッチピボットを表示したものですが、これであればごちゃごちゃしないので、エントリーのタイミングが計り易くなると思います。
このほかにも、短期のトレードをメインにしている方であれば、5分足チャートに1時間足の段階のフィボナッチピボットを表示させるのもおすすめです。
その段階の逆張り・上位の段階の順張り
次は売買戦略です。
フィボナッチピボットを使ったトレード戦略はいくつか考えられます。
ひとつはトレンドの流れに乗った順張りです。
フィボナッチピボットのサポート、もしくはレジスタンスラインを越えてきたので、トレンドの流れに沿ってその方向にポジションを建てる
トレードは順張りが理想的ですが、トレードする段階と同じ段階のサポートやレジスタンスラインを越えてきた場合の順張りは注意してエントリーする必要があります。
なぜなら、サポートやレジスタンスラインを越えてきた時点で、すでにトレンドの大部分を消化している可能性が高いからです(リスクが高い割にリターンが少い)。
また、たとえサポートやレジスタンスラインを越えてきたとしても、ヒゲを付けて戻ることもよくあります。
もうひとつ考えられるのは逆張り。
フィボナッチピボットのサポート、もしくはレジスタンスラインにタッチして反転したので、それまでのトレンドの流れと反対の方向にポジションを建てる
ボリンジャーバンドと同じような使い方です。
一見トレンドに逆らったリスクの高い戦略のように思えますが、損切りラインが決め易くリスクが少ない割にリターンは大きい戦略。
結論をいえば、フィボナッチピボットは逆張りで使うのがおすすめです。
ただし、できればエリオット波動のフラクタル構造を利用して、上位の段階のトレンド方向にポジションをたてるのが理想的です。
つまり、その段階は逆張りでも、上位の段階では順張りであることが理想的なトレーディングであるということです。
こうすることで、リスクはより少なく、リターンはより大きくなります。
さらに、エリオット波動の修正パターン、チャネルライン、フィボナッチ(リトレース、波の倍率、黄金区分)などを絡めて相場分析できれば万全です。
ぜひ試してみてください。
フィボナッチピボットが機能しなくなる2つのケース
経験上、通常の相場では、フィボナッチピボットのサポート4またはレジスタンス4ラインを越えてくることはほとんどありません。
トレンドの最後は必ずと言っていいほど勢いがあるので少し怖いですが、トレンドがサポート4またはレジスタンス4ラインまで進めば、そこが波の節目である可能性は高いと言えます。
しかし、サポート4またはレジスタンス4ラインを越えてくるケースが2つあります。
■トライアングル修正波や横這いの複合型修正波からの抜け出し
■衝撃波の内部波動で延長波(エクステンション)が発生
エリオット波動の調整パターンでは、横ばいの持ち合いになる修正波が2つあります。
トライアングルと横這いの複合型修正(たとえば、Wフラット→Xジグザグ→Yトライアングル)です。
持ち合いの展開でチャートには小さな足が並んで現れてくるので、フィボナッチピボットのサポートとレジスタンスは間隔は当然小さくなります。
しかし、トライアングルは衝撃波(インパルス)が現れる前の最後の修正パターンであり、均衡が破れると必ず勢いよくトレンド方向に進んでいきます。
このようなケースでは、サポート4またはレジスタンス4ラインは機能しなくなるので注意が必要です。
また、衝撃波の内部波動の延長波(エクステンション)が発生すると、その段階のサポート4またはレジスタンス4ラインを高い確率で越えてきます(延長波は、エリオット波動のサイクルで最も勢いがある波動)。
これはエリオット波動で波をカウントする場合に結構役立ちます。
「サポート4またはレジスタンス4ラインを越えてきた! これは延長波だな!」と衝撃波のエクステンションを見極めることができるというわけです。
※エリオット波動の延長波についてはこちらをご覧ください。
エリオット波動「衝撃波のエクステンション」を徹底解剖!
衝撃波の内部波動でトレンド方向に進むのは、1波動目・3波動目・5波動目。通常、延長波はそのいずれかひとつ。
どのようなケースでどの波動がエクステンションをするのか掘り下げてみました。
以上、フィボナッチピボットを効果的に使うポイントをまとめたみました。
波の節目はテクニカルのポイントが往々にして重なります。エリオット波動、ボリンジャーバンド、一目均衡表の雲、チャネルライン、そしてフィボナッチピボット。
また、相場の各段階の波は上位の段階の目標に向けて同時並行で進んでいくため、波の節目では段階の違うテクニカルも重複します(たとえば、デイリーフィボナッチピボットのサポート3とウィークリーフィボナッチピボットサポート1が重なるなど)。
結果、トレンドが変わるポイントでは、いくつものテクニカルが何重にも重なってくることになるわけです。
このような視点で相場を分析することができるようになれば、きっと相場の波(サイクル)の節目を予測する精度は上がってくると思いますよ。
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